サイクルトレイン|導入事例|LINE Fukuoka Corporation

LINE SMART CITY FOR FUKUOKA

サイクルトレイン

目次

 

2022年3月26日、自転車を折りたたまずにそのまま電車内に持ち込める「サイクルトレイン」が福岡でスタートしました。私たちLINE Fukuokaの拠点でもある福岡の交通の要である西日本鉄道(以下、西鉄)で開始したサービスは、ショートトリップや密にならないサイクリングの新たな移動手段として注目を集めています。

 サイクルトレインとは

自転車を折りたたまずそのまま鉄道車両内に持ち込めるサービスです。西鉄では、2021年10月から12月の期間で西鉄天神大牟田線 特急列車において本サービスの実証実験を実施。2022年3月より本導入するにあたり、西鉄電車LINE公式アカウントに予約機能を追加し、事前予約・決済・モデルコース検索など「サイクルトレイン」の予約・購入から当日の乗車までLINE一つでの実現が可能となりました。

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 実証実験から見えてきた課題

2021年10月から12月の実証実験時は予約なしで受け付けたところ、想定よりも多くの方が利用されました。ある時には一度に約30台が乗車して2両分の車両が自転車で混雑状態となっていました。

一方で対象駅の駅員の方たちは、受付や報告業務、利用者への乗車ルールの説明に追われ一つひとつの対応に負担が生じていました。本格導入に向けては、一般利用者と自転車利用者との混雑緩和策と駅員の業務負担を軽減の課題解決が急務でした。

課題


西鉄と「LINEを活用した西鉄グループのDX推進に関する連携協定」を結ぶLINE Fukuokaでは、これらの課題を解決すべく、既存の西鉄電車LINE公式アカウントをベースに、実証実験中のサイクルトレイン利用者や現場の声を反映しました。利用者がサイクルトレインをより便利に、楽しく利用できるようなシステム導入を目指したサポートを実施しました。

                サイクルトレインの予約方法(操作画面)遷移画像

実施レポートについてはこちら

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今回はその開発秘話を徹底解剖するため、プロジェクトを牽引した西鉄の江﨑さんとLINE Fukuokaの横尾に話を伺いました。

 西鉄とLINE Fukuoka担当者インタビュー ~「サイクルトレイン」誕生秘話~

地道な現場調査から見えてきた、ユーザーの声と現場の声を大切に。
福岡の街に現れた新たな移動手段「サイクルトレイン」の誕生秘話。

江崎さん①横尾さん①

左: 江﨑 駿(えさき・しゅん)氏 西日本鉄道株式会社 鉄道事業本部
福岡県出身。2008年に西鉄へ入社。鉄道部門で運転士、駅助役の経験を積み、現在は営業部 営業課所属。 

右:横尾 友博(よこお・ともひろ) Smart City戦略室 共創推進チーム MaaSパート
佐賀県出身。2018年にLINE Fukuokaに入社後、これまでにLINEを活用した地方×観光業との取り組みや福岡空港との「お土産ピックアップ」事業等を担当。

 

想定外の事態が起きた実証実験
―そもそもサイクルトレインは、どのような経緯で始まったのでしょう。

江﨑さん:きっかけは、コロナ禍で落ち込んだ観光需要の回復と密を避けた移動の活発化を促すための仕掛けづくりでした。他社で既に取り組みが始まっていた「サイクルトレイン」を西鉄でも実施してみようという声が持ち上がったのが2021年8月。実施に向けて営業課で検討することになり、私が担当になりました。

正直、最初に話を聞いた時は、「自転車を電車に載せてどこ行くのか?」「持ち込む作業が大変なのに利用する人なんているのか?」と思っていたんです。何よりもお客さまが安全に乗り降りして移動できるのかという点もとても気がかりでした。だから企画を考えてと言われた時もなかなか手を付けられず……(笑)

9月から本格的に準備を進めて、10月23日から土・日・祝日限定の実証実験を2カ月間実施。期間中は予約なしで受け付けたところ、1日平均で75台が利用し、予想以上に多くの方に乗車いただきました。嬉しい反応ではあったのですが、ある時、一度に約30台が乗車して2両分の車両が自転車で混雑してしまったことがあったのです。本格運用を考えると、お客さまの安全確保や駅員の業務負担に課題が残る結果となり、「LINEを活用した西鉄グループのDX推進に関する連携協定」を結んでいたLINE Fukuokaさんへご相談しました。

実証実験時の車内の様子

実証実験時の様子

―具体的にはどのようなことから取り掛かったのでしょうか。

横尾:江﨑さんと初めてお会いしたのが同年12月1日でした。利用客のアンケートを見ながら課題を洗い出す中で、かなりしつこく「実際に現場を見たい」「駅員さんにヒアリングさせてほしい」とお願いをしたと思います。

これは以前、西鉄さんとDXの取り組みをした際に、ユーザー満足度は高かったものの現場の負担が大きくなってしまったという反省があったからです。事前に予測可能な課題は、なるべく解消しておきたいと思い、主要駅である福岡(天神)駅、薬院駅、大橋駅の3駅で現地調査を実施しました。

 

EXとCXを向上させるために開始した地道な現場調査
―LINE Fukuokaからのサポートで、助かった点やうれしかった提案はありますか。

江﨑さん:現場調査では、予約画面の見え方や案内ポスターの掲示位置まで、私一人では気付けない課題点をご指導いただきました。現場の声を拾い上げて一緒にDXを進める方法を体感して、「この進め方で間違っていない」という手応えを感じましたね。

駅員へのヒヤリングの様子

横尾:今回は特にEX(従業員体験)の向上から進めていきました。一番の課題であった駅員さんの管理業務や窓口業務の改善をしつつ、CX(顧客体験)の向上につながる仕掛けをLINE内に構築して、双方がともに使いやすいUI(ユーザーインターフェイス)、UX(ユーザーエクスペリエンス)を目指したんです。

 提案初期の企画書(ユーザーにどうなって欲しいかの認識合わせの為に作成)

提案初期の企画書

江﨑さん:本当にとてもありがたいご提案でしたね。自分たちだけだと、一方向からしか考えが出ないところをユーザー視点からご意見いただいて、本格運用に向けてより良いかたちを検討できました。

―進める上で苦労した点は?

江﨑さん:予約システムの仕様書作りです。特に普通乗車券をオンラインで発売するのは初めての試みで、乗車券の規則をシステムに反映する点に苦労しました。

横尾:予約画面にも購入日や注意書きを大きく表示しましたよね。

江﨑さん:ええ。本格運用の課題は、様々なところにありましたが、できる限り課題を解決しながら実証実験終了から約3ヵ月後には予約開始のご案内ができました。

 

制約がある中でも、「できるかも」と思わせてくれた
―社風の違う2社でDXを進める時、どんなことを心掛けたのでしょう。

横尾:お互いが何を大切にしているかをなるべく知っておくことを心掛けました。その上での提案であれば、大きく拗れることはありません。例えば「これはうちでは難しい」と断られた時、必ずそこには理由があるはずです。その理由がわかれば「では、これならどうでしょうか」と新しい提案ができる。その小さな擦り合わせが大切だと思っています。

横尾さん②

江﨑さん:できないと思い込んでいたことでも、横尾さんと話していると「たしかに」「できるかも」と思わせてくれました。外からの風は大切ですね。

横尾:逆に私たちも、机上で考えるDXと現場のDXは違うのだと気付かされます。そこには、社内調整や会社の方針などが複雑な要因が絡み合っていて、全部がクリアにならないと動けないというリアルな実情があるからです。だからと言って何もできないわけでありません。制約がある中でいかに良いものをつくるかが腕の見せ所です。

―本格運用後の利用状況と課題について教えてください。

江﨑さん:3月26日から本格運用をスタートして、現在は1日平均20台にご利用いただいています。自宅の最寄り駅から乗って大牟田駅で降り、そこから熊本県まで目指すといった本格的なサイクリストもいれば、親子で久留米駅まで行って日帰りでサイクルコースを満喫して帰って来られる方もいらっしゃいます。今後はさらなる乗車率のアップを目指して、いかに認知度を上げられるかが課題です。

横尾:利用者満足度は80%を超えていて、他人におすすめしたい評価を表す「NPSスコア」もプラスの数値が出ています。システム面では、乗車・降車、予約の変更の方法などまだまだ周知ができていない細かな操作をわかりやすく使いやすく改善していく予定です。



福岡をもっとおもしろくするために
―今後、どのような展開を考えていますか?

江﨑さん:2023年10月に開催される「ツールド九州 2023」に向けて、サイクルトレインを使った旅行団体の受け入れ体制を整えたいと思っています。ぜひ、横尾さんのお力もお借りしたいです。

江崎さん②

横尾:いいですね! サイクルトレインは全国で密かなブームになっていますが、Webで簡単に予約して切符を買えるのは、まだ西鉄さんだけです。このシステムを全国のモデルにできるといいですよね。

江﨑さん:ほかにも、サイクルトレインを使って、他社さんや自治体さんとのコラボレーションの企画ができれば、福岡全体でサイクルツーリズムが盛り上がり、おもしろい化学反応が起きそうだなと思っています。

ツーショット

―今後、どのような展開を考えていますか?

横尾:観光きっぷのデジタル化やICカードデータを利用した情報発信など、まだまだ西鉄さんとLINEでタッグを組んでできることはたくさんありそうです。次に新しいことを提案する時も、とりあえず江﨑さんに声をかけますね!(笑)

江﨑さん:ぜひ一緒に挑戦しましょう! サイクルトレインも本格運用まではめちゃくちゃ大変でしたが、横尾さんをはじめ、LINE Fukuokaのみなさんのおかげで明るく前向きに取り組むことができましたから。一緒に楽しく福岡をもっともっと良くしていきましょう!

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<プロジェクトメンバー> ※敬称略
LINE Fukuoka株式会社 Smart City戦略室 坂口、横尾、杉本、西園
西日本鉄道株式会社 鉄道事業本部 塩田、松岡、江崎、市丸
西日本鉄道株式会社 グループ営業企画部 結城、近藤
西鉄情報システム株式会社 平嶋、藤本
株式会社西鉄エージェンシー 長谷川

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